2014年5月15日

静かな日

静かな日

ここ最近はラウンジを開放していて、とても心地良い風が入ってきている。なんとも良い気分だ。5月に入って日中ぽかぽかと暖かくなってきたので、窓を開け放っていても肌寒くはない。車のエンジン音は聞こえないけども、代わりに商店街の音が聞こえる。シャッターを開ける音、台車を押す音、近所のおばちゃんの話し声、朝のあいさつ、つばめの鳴き声。本当にここはロケーションが良い。朝も素晴らしく良い。「良い」という言葉をいくつ並べても足りないくらい。僕も野口さんも、特に申し合わせた訳でもなく、一番好きな時間帯はという問いには、必ず「朝」と答える。今いてくれているヘルパーさんはとても早起きなので、僕(明石)が出勤してきた8時にはもう朝ごはんを作って食べていたりするのだけど、とりいくぐるでの朝を満喫しているように見える。とりいくぐるの良いところにもう気づいているらしい。それは僕からしても嬉しいことだ。

一方、夜はというとこんな感じである。
怒涛のGWが終わり、すっかり客入りは落ち着いてしまった。何だか気が抜けてしまったのだけど、次のピーク、おそらく梅雨が明けた7月頃に向けて、とりいくぐる内を色々と整備し、また改善していかないといけない。今はそういったことに取り組んでいる。といっても夜になると、どうもビールに手が伸びてしまうのはこの陽気のせいなのか、野口さんと僕の2人してビールを飲んでお客さんとワイワイしゃべっている。GWなどのピークだと、やはりどうもお客さんと話をするのは難しい。チェックイン、ドリンクの注文、電話対応と、何かしら仕事が舞い込んでくる。なので平日、さほど宿泊が多くない日には、ビール片手におしゃべりすることが出来る。
そしてこの奉還町という街は、岡山駅から徒歩13分という立地にも関わらず非常に静かで、それはここが細い路地が這う住宅街で、大きな幹線道路から離れているおかげだ。夜、ふと外へ出てみると辺りをすっかり静寂が覆っていて、不思議な気分になる。ここだけはゆっくりとした時間が流れているような、そんな妙な錯覚に陥る。

そしてたまに、何もしなくていい瞬間がある。
それは全くお客さんがいないという意味ではなく、それぞれお客さんが、ここでの過ごし方を発見し、それぞれの心地の良い方法で、不自由なく過ごしている時、その瞬間は訪れる。僕はカウンターに座り、プロ野球速報をチェックしたりしながらカタカタと帳簿をつけていたりする。お客さんは、他のお客さんとしゃべっていたり、隅っこで本を読んでいたり、自分でインスタントコーヒーをいれて飲みながら、タブレットで明日の旅程を確認していたりする。これが楽しいのかと言われると難しいんだけど、こんな夜も悪くないと思う。その日泊まっているお客さん全員と半ば飲み会のようになる日もあれば、こんな風にそれぞれが好きなように、かつ快適に自分の時間を過ごしているような静かな日もある。
静かな日、それはお客さんにとって肩透かしである場合もあるかもしれない。ワイワイと、オーナー、他のお客さん関係なく盛り上がれるような夜を想像していたら、それはとても物足りなく映るだろう。もしくは、人見知りで、静かに調べものをしたり、本を読みたい人もいるかもしれない。そういったお客さんには、静かな日は理想的だろう。

僕らは、色んなお客さんそれぞれに快適に過ごしてもらいたい。快適というのは、自分たちにとってもそうかもしれない。今の状態は決してベストではないと思っている。アットホームでもなく、ビジネスライクでもない。そこを目指すことは簡単ではなさそうだが、やりがいもある。結局のところ僕は、今はとにかく、良いゲストハウスになれるように頑張りますという気持ちでいっぱいだという報告をしたかったのです。